「ふーっ・・・ここが英徳?馬鹿でかい・・・」
一人の少女が大きく背伸びをした。
漆黒の髪をなびかせて学園の中に入っていく。
「わぁ〜桜満開!アメリカで見るのよりか綺麗。
ヤッパリ日本に戻ってきて・・・いや・・・戻されたのか・・・
でもどうして?わかんないけど・・・
まぁ!いいか!楽しまなくちゃ!!学園生活!!!」
一人でブツブツ言っている事に当の本人は気付いていない。
そして、自らが注目の的だという事も・・・この少女は鈍感のようだ。
それはそうだろう。
真っ白い肌に漆黒の大きな瞳にさらさらの黒髪。
長くて綺麗な脚。
そして何よりも人をひきつける何かをこの少女は持っていた。
学園内をキョロキョロしながら探索して、やっとの思いで目的の場所へと辿り着いた。
コンコンとノックをするとなにやら媚を売るような声で出迎えられる。
「牧野様!!!ようこそいらっしゃいました!!この英徳学園へ。お父様のご活躍はすばらしいですね。」
あーあ・・・ウザイ
ここで殴りでもしたら・・・父に何を言われるかわかったもんではない。
この少女が嫌いなものはハッキリしていた。
金、権力
この二つが大嫌いであり、自分がそれを所持している事も嫌いであった。
両親にはゴチャゴチャ言われているが、
少女は持ち前の人柄の良さで人々をひきつけ誰とでも屈託なく会話をする。
もちろん!金持ち、庶民を問わずである。
少女は誰からも好かれていた・・・お嬢様らしからぬ行動も・・・
好かれていた理由の一つだが・・・これは今は伏せておこう。
彼女のイメージを崩す恐れがある・・・
「いえ。私の力ではありません。今日からよろしくお願い致します。
それから敬語はおやめください。私はただの生徒です。父の事は・・・家の事は忘れていただけませんか?」
「と・・・とんでもありません!!!出来かねます。牧野様!!!
お父様からは先ほどお電話で『娘の好きなようにさせてくれ』と仰せつかっておりますのでどうか・・・」
少女は拳を握り締めこう思った。
あのクソ親父!!!なに考えてる!!!
今すぐ抗議の電話を入れたいが・・・必死にこらえこう言い放つ。
「好きにさせてもらっていいのですね。だったら・・・敬語で話さないでください。」
「しかし・・・牧野様。人の眼と言うものがありますし・・・お願いしますよ。
牧野様にその様な・・・ことをしたら・・・私は・・・お願いします!!」
そう言って深々と頭を下げる理事長を目の前に少女は何も言えず、ため息をついた。
あーあ・・・あたしは普通にしてほしいだけなのに・・・
それも無理かな・・・でも!!あたしはあたしらしく!
「わかりました。でも・・・特別視だけはしないでください。そういうの嫌いなんです!!!」
そう言うと理事長は困ったようにまた頭を下げてくる。
もう少女はため息しか出なかった。
「みなさん!今日アメリカから帰国されたばかりの牧野つくし様です。さぁー牧野様」
教師とは思えない低姿勢の担任・・・
少女は引きつった顔を無理やり笑顔にしてこう挨拶する。
「初めまして、アメリカから帰国しました。牧野つくしです。みなさんよろしくお願い致しますね。」
ニッコリ笑顔で言う。
視線が突き刺さるが、怒鳴るわけにもいかない。
少女は窓側の一番後ろの席に腰をかけ空を見上げた。
これから何が待ち受けているのか・・・鈍感お嬢様は知るはずもなく・・・
* * *
「アーーーーッ!!!うっとおしい!!!何よ擦り寄ってきて!!!
あたしと友達になりたいんじゃなくって!!!いえと仲良くしたいんでしょうが!!!
このお気楽坊ちゃんに!お嬢様方!!!ありえない!!!くそやろー!!!」
一頻り大空に向かって叫んだ後・・・次の授業が移動だった事に気づきバタバタと音を立てながらその場所を後にした。
一人の人物が小首をかしげながら見ていたこと・・・
「あれ?あの子・・・つくしかな?まさかね」
その人物は少女が去っていったドアを何時までも見ていた。
授業中・・・少女は考えていた。
父と母の帰国前の言葉の意味を・・・
一週間前突然父の書斎に呼ばれた。
めんどくさいと思いながらも父の命令には従わなくてはならない。
書斎に行くと・・・満面の笑みで待つ両親達が居た。
『お父様、お母様何か御用でしょうか?』
『用もないのに呼ぶ馬鹿は居ないだろう?つくし一週間後帰国しなさい。進は戻らないからお前だけ戻りなさい。
いいか?これは決定事項だよ。なぁ千恵子』
母は満面の笑みで頷く。
『ええ。そうですわ。春男さんの仰るとおりです。
つくしさん、お父様の言うことを聞きなさいね。じゃもういいわ』
要件だけ告げて仕事に戻る。
ここまではいつもの事だ・・・
だが・・・最後の一言が妙に引っかかっていたのだ。
二人で声を揃え
『『楽しみですよ。将来のことが』』
可笑しい・・・
何かあるとは思うがそれが何だかわからなかった。
その事実を知るのはもう少し先の話である。
その日は何事もなく終わり、屋敷に戻ると友人が来ていることを告げられる。
部屋に入った途端。
「つくしーーーーーー!!!!!会いたかったよ〜〜〜ん!滋ちゃん!うれしい!!!!」
絞め殺す勢いで抱きしめているのは大河原滋。
つくしの小さい頃からの親友の一人だ。
先日アメリカであったばかりだと言うのにこの歓迎は凄い・・・
「ぎゃ・・・ぐるじ〜〜〜〜滋・・・放して!!」
「おっ!!つくしごめん!うれしくってついね〜」
そういいながらソファにすわりケーキを貪る。
「滋。どうしたの?」
「だって!!!つくし!!!どうして永林に来ないの??英徳なんか・・・
滋ちゃん悲しい!!!せっかく・・・つくしと学園生活楽しめると思っていたのに!!!」
あたしだって滋といっしょがよかったわよ!!!でも・・・お父様が・・・
あーあ・・・滋はいいなぁー輝いていてさぁ〜婚約者が居るとこうも違うものなの?
それに・・・恋愛!!好きな人と婚約できるなんて・・・はっきり言って凄い!!
「つくし!!!つくしも恋愛したいの??滋ちゃんに任せれば!!!素敵な恋に発展!!!間違いなしよ!!!」
凄い剣幕だ。
つくしは少なからず身を引いた。
「あたし・・・綺麗じゃないし!!恋愛なんて・・・」
すると滋はため息をつく。
「興味ないはずないでしょう?もたもたしていたら!!!!
まずいことになるわよ!!!」
「まずいこと?」
滋はコクコクと頷く。
「ある日突然・・・」
「突然??」
「ホテルかなんかに・・・連れて行かれて」
「連れて行かれて?食事?そんなのよくあることじゃん」
のん気に言うつくしの肩に手をやり首を振る。
「いい・・・つくし。一つしかないでしょう?
お見合い!お見合いだよ!!!」
はいはい・・・お見合いね。
お見合い?
「えっつ!!!!お見合い!!あたしイヤだ!!!絶対に!!!」
「うんじゃ!恋をしなよ〜つくし〜滋ちゃん応援しちゃう!!」
そう言って抱きしめられる。
「そういっても・・・」
「チャンスは自分で掴もう!!!これが滋ちゃんのモットーだよ!!!つくし!!!頑張りなさい!!!」
そう言って勢いよく背中を叩かれた。
次の日に滋の推理は当たることになろうとは・・・思いもせずにつくしは背中をさすった。
中途半端ですね。
リレー一話は楪が担当しました。
これからどうなるかは・・・華蓮ちゃんに!!!お任せします。
がんばって(無責任な奴・・・by司)