4人でダイニングテーブルを囲んで取る朝食。
英才教育を今よりずっと小さな頃から受けさせている子供達の食べ方は、一般庶民の子供達に比べると綺麗なんだと思う。
でも、やっぱり5歳児は5歳児。
食べ零しもするし、服を汚したりもする。
食事中に2人を一緒に見る事は出来ないから、修と陵を1日ずつ交代して司も見てくれる。
「ほらっ、陵!お前、口の周りグチャグチャじゃねぇか!」
だから、落ち着いて食えって言ってんだろ?とブツブツ言いながらも、陵の口の周りをナフキンで拭いてくれる司。
修と陵の父親をしている司が、昔、子供は嫌いだと言っていた人と同一人物だと思えない。
そんな司をあたし同様、タマさんを初め、メイドの皆さんが笑顔で毎朝見つめている。
きっと、司がその視線に気付いたら、顔を真っ赤にして怒るんだろうな。
「お前等、何見てんだ!」って…。
これも慣れなのかな?司がそんな視線に気付いた事は、今まで一度もない。
朝食を済ませ、新聞を読みながらコーヒーを飲んでいた司を、現在、司の第一秘書である西田さんが迎えに来た。
朝の家族の団欒が終わる瞬間。
「おはようございます、つくし様。社長は…」
「おはようございます、西田さん。司なら中にいますよ。呼んで来ますね。」
西田さんは心得たように、プライベートスペースであるダイニングには入って来ようとしない。
なるべく家に仕事を持ち込みたくない司の事を理解しているからだろう。
「司、西田さんが迎えに来たよ。」
ソファーに座る司の隣で司と遊んでいた修と陵に、「時間だとよ。」と一声掛けて立ち上がる司。
スーツのジャケットを羽織り、エントランスまでの距離を双子を抱っこして歩いていく。
「おはようございます、社長。修様、陵様。」
先にエントランスに着いていた西田さんが、司達に挨拶すると、
司の腕から下ろされた双子は、きっちり並んで、
「「おはようございます、西田さん。」」
と頭を下げて挨拶する。
そんな双子を優しく見つめる西田さん。
司は双子の頭をクシャクシャと撫で、「良い子だ。」と優しく微笑んだ。
「「パパ、行ってらっしゃい!」」
修と陵もにっこりと司に微笑み返し、元気に見送る。
「あぁ、行って来る。今日は多分遅くなると思うから、お前等、先に寝てろよ。」
司の言葉に大きく頷く2人。司はもう一度にっこり笑って、「よしっ!」と2人の頭を撫で、
「じゃぁ、幼稚舎行く準備して来い。」
と、2人を自分達の部屋へと戻した。
「今日、遅いの?」
修と陵が、廊下をバタバタ走っていく音を聞きながら、あたしは司に聞く。
「多分な。お前も先に寝てろよ。今は、大事な時期なんだから…」
司はそう言って、あたしのお腹に手を当てた。
「うん。でも、お昼寝もしてるし、大丈夫。」
お腹に当てられた司の大きな手の上から、自分の手を重ねる。
「そか。でも、無理すんな。じゃ、行って来る。」
そう言って、本日3度目のキスをあたしの口唇に落とす。
「ん。行ってらっしゃい。気を付けてね。」
あたしがそう言うと、司はあたしに背を向けたまま軽く手を上げてエントランスから出て行った。