―――血よりも赤く水面より揺らめく満月が照らし出す夜

     狂気にも似た感情が溢れ出し憎き者からの赤い水を浴び口にする時、人の姿を借りし獣は生まれる

            人である事を捨てる事と引き換えに、獣は永遠の命を手に入れる

          愛しき者を再びその手にする為だけに存在する獣に成り果てし者の左胸には、

               この世の者ではない証、黒き薔薇の刻印が刻まれる

         孤独の中で生き続ける獣の元に、再び光の世界へと導き出す女神が舞い降りる時、

                     獣の刻印は色付き始める―――





 

この世に二人しか居ない錯覚に陥る様な静寂の中、聞えて来るのは二人の甘い息遣いだけ。

互いに交し合ったのは、これから二人に訪れるであろう明るい未来への愛の契り。

 

『死が二人を別つまで、永遠に一緒にいよう…』

 

そう、約束した筈だったのに…。

お前を愛してしまったが故に、俺の中に芽生えてしまった悪の黒い薔薇。

この薔薇に、色を付ける事が出来るのだとすればそれは、もう一度、お前からの愛を一身に受けた時だけ。

その時になってやっと、俺の中に咲く黒い薔薇は深紅の薔薇へと変わるだろう―――

 

これは、遥か昔から繰り返される輪廻転生の物語――――

 

 

Prologue.