道明寺財閥とクロード財閥の結婚披露宴はそれは盛大なものだった。
両者財力を世界中に知らしめることが目的なのは明白な事。
俺はこんな結婚披露宴などどうでもいいが、夜のことの為に耐えている。
獲物となる商品が着替えに行っているときに旧友たちが挨拶に来た。
「「「司。おめでとう。」」」
「ああ。契約だから仕方ねぇ」
俺がそういうと3人は顔をしかめ俺に一言一言告げてきた。
「司。樹の事虐めないでね。」
「樹を悲しませるような事だけはもうするな。」
「樹は俺達の大事な子なんだ。」
なんだ??お前らが何故、クロード財閥の令嬢の事を知ってやがる?
お前らの会社なんか関わりだってもてねぇーはずなのだがそれだけじゃない。
まるで…昔っからしっているみてぇーじゃねーか…
俺の中に何かが生まれてきた………決して綺麗な感情ではない。
くだらないものは捨てた。とっくの昔にな。
俺の中に今ある感情は、怒りとイラつきだ。
それ以外はないはずなのだが今俺の中に何かの感情が存在している。それが何なのかは分からない。
「へぇー『大事な』か――――関係ねぇーな。」
途端にこいつらの表情が強張るのが判った。
「俺のモノになる女にどう俺が接しようと関係ねぇーだろう?
今日からは俺の持ち駒だ。持ち駒をどう動かすかは俺が決める。
お前らの『大事な子』――――― 馬鹿か?大事な子はもう俺の所有物になったんだよ。
お前らに指図される覚えはないな」
「「「司。後悔だけはするな。大事なもの失うぞ」」」
「大事?そんなものこの俺にはただの一つもねぇ…
昔も今もこの先 ――――― 永遠にな。」
俺はこいつらを睨み付けた。
なぜかこいつ等は悲しそうな眼で俺を見る。その眼が嫌いだ。
イラツク オマエラ コレイジョウ オレノ マエニイルナ。
ダチダロウト コロスゾ。
「お前ら………消えろ。これ以上俺の前にいるな。
それといいか?お前らの大事な子?
―――――――笑わせるなよ。
いいか、何度言わせる気だ?その大事な子は道明寺の所有物になったんだよ。
この俺様のな!!」
「「「―――――― 本当に変わったな。司。」」」
「あー変わったよ。それがどうした?いい加減にしろよ。
この席じゃなければ、殺しているぞ?消えろよ」
あいつらは俺を一度だけ見据えると人の中へと消えていった。
なんだ?あいつらは?
わけわかんねぇー。
数時間のち披露宴を終えた俺と妻になった女は屋敷へと戻るリムジンの中も無言だった。
チェ!何か話しかけたりしたらどうだよ!!!この女…何を考えているんだ?
そんな事を考えているうちに邸のもんをくぐった。
使用人たちに諭され俺とは別のバスで事の為に用意をするようだ。
―――――― そう 俺達は今日が ……… 初夜 だ
一時間もすればあの女も従順な俺のモノとなるだろう…今までもそうだったように。
モノになれば俺の熱も冷める。どうせあの女もそうだろう…
でも、あの女には価値があるのだ。
だから、婚約し、結婚してやったんだよ。
――――― 道明寺司様がな…
俺はシャワーを浴びながらそんな事を考えほくそ笑んでいた。
俺が漆黒のガウンで身を包んで寝室へと入っていくと、ソファーへと腰をおろし、
紫煙を燻らせていた。
カチャリと音がして女が入ってきた。
俺とは対極の色 ―――――
白いナイトガウンに身を包んで、少し下を向いてドアに張り付くようにいた。
俺は…獲物を逃がさないように女を凝視し続けた。
数分がたっても同じ場所から動こうとしない……仕方がない…
俺は立ち上がって、女の元へ行く。
「樹さん、こっちへ来てくださいませんか?」
俺が手を差し伸べてやったのに…女の手は動きはしない。
ったく…ここまでさせるなよ。
俺は女の手を少しばかり強引にとってソファへと腰掛けさせた。
ベッドに直行でも良かったのだが…この女と『話』がしたかった。
なぜかそういう気分になったのだ。
「樹さん。ワインでも飲みませんか?」
俺は真紅のワインを注ぎ女の前に差し出した。
「――――― あたしに拒否権はないのですね」
そういいながらワインを口元に運んだ。
口元に自然と眼がいく。
うまそう…喰いついたらさぞかし甘いんだろうな…
走り出そうとする欲望を『あと少しの我慢』と自身に言い聞かせ、押さえ込んだ。
女を見つめる眼は野獣そのものだろう。
「樹さん。緊張しているんですか?」
俺は女の眼を見て言うとすぐに逸らされた。
ハッ ナンダ コノオンナ ナゼダ コノオレカラメヲソラスンダ
オレ ヲ ムシ スルコトハ
――――― 重罪
「樹さん。いい加減。俺を見てくれませんか?夫婦になったのですから…
話ぐらいはしましょうよ…。」
易しく言ってやったのに ――――― 。
「それも契約です。話すことなんてありませんよ。」
「ない?そうは僕は思いませんが、色々あるでしょう?今後の事とか」
「―――――そんな事必要ないでしょう?」
「必要あることもあるんですよ。樹さん……今日がどんな夜か………
お分かりですよね。初夜ですよ。やる事があるでしょう?」
そう言って女の腕を掴むと女は嫌そうに俺を見た。
そんな眼でこの俺を見るな。
気がつくと俺は女をベットに引きずっていき、薔薇の花の散りばめられたベッドに押し倒した。
古代のクレオパトラは寝台を薔薇の花で埋め尽くし、情事におぼれていったと耳にしたことがある。
この薔薇も演出というものだろうか…だれがこんなことを頼んだ?
まっ…この花の中でこいつを喰うのも悪くはないな。
俺は上から女を見下ろした。
震えている事が判る………。
オビエロ オビエロ ソノホウガ オレハ コウフンスル。
女は俺を震えながらも睨み付けてくる。
ったく…お前は何を考えてんだぁ?
「樹さん、まさか初夜の意味を知らないわけないでしょう?」
「………」
女は赤くなり、俺から眼を逸らす。
まさか………この女経験がないのか?
21にもなって?
可笑しいのと同時に嬉しさがこみ上げてきた。
「初めてなんですね。大丈夫ですよ。任せてくれれば、最初は痛いと思いますが
慣れれば苦痛以外のシロモノを与えれますよ。この僕が貴方に与えて差し上げます」
ニッコリ微笑みかけて、女の首筋に指を這わした。
ピクッ
へぇー感度よさそうだな。
「やっ」
「 ―――――― こんなことで 反応するんですね。
そんなんじゃ今夜持ちませんよ。」
ニカニカ笑いながら、俺は顔を近づけていき唇を重ねた。
唇を重ねた瞬間 ―――――― 俺の中の何かが疼いた。
なんだ?誓いのキスのときにも感じたこの感覚………わかんねぇー
唇から、甘い吐息が漏れる。
いい声、キスだけで。
「ここから、進めても構わないですよね。」
「ッ……あたしに拒否権はないのでしょう?」
少し悲しそうに女は言う。
「ええ、ないですよ。」
シュルッッ
女のガウンの紐をとく…。女の顔が恐怖に歪む。
イイカオダ コンナカオ ガ オレヲ コウフンサセル。
やはり、コノオンナの肌は白い、成果石膏のような白さだ。
「綺麗な肌ですね。穢れを知らない」
俺が女の耳元で囁く異様にしていうと女が俺の視線から逃れるようにして身じろぎした。
ニゲラレルトデモ オモッテイルノカ。
―――――― フッ 逃がすわけねぇーだろう?
上物の獲物をな…
「じっとしててくれますか?」
「―――――――― クッ」
女は小刻みに震えていて……涙を流していた。
ドクンッ
なんだ?
俺の中に何かの感情があふれ出した。
コノオンナ ノ ナキガオヲ ミタクハナイ。
泣くな。泣かないでくれよ。
涙を拭ってやろうとしたとき、女が俺にこう言い放った。
「犯したければ犯せば良いわ。それに貴方間違っているわ」
「なに?」
俺が眼を見開くと涙をためた眼でさらにこう言う。
「あたし、貴方以外に抱かれた事あるもの。あたしが一番愛した人だと思うわ」
ナンテイッタ 『アナタイガイニダカレタコトガアル』
ナンダ ユルサネェー コノオンナハ オレノエモノ
オレノエモノ オレノモノ オレノオンナ
ドロドロとした感情が俺の中に濁流のように流れ込んできた。
イライラする。
コノオンナ ユルセネェー オレ イガイノ オトコ ガ コノオンナヲダイタ?
ナゼ ダカセタ?
俺がどんな眼をしているのか、判っていないのか…女は言葉を続ける。
「あたしは貴方を愛してなどいないわ。」
そう言った。
「黙れ!!!!なんだ?!初夜に浮気の告白か?あぁ??
純情そうな顔して、とんだ女だな…」
俺は女の体を押さえつけながら言う。
女はこんな状況にも関わらず、震えながらも俺を睨んでくる。
「でもな……この俺がお前を調教してやるよ。」
そう言って俺は、女を征服しつくした。
ほとんど強姦だった。
女が涙を流そうが、苦痛に身をよじろうが関係ない。
女は泣き叫んで『もうやめて』といったが、まるで俺は玩具を乱暴に扱う子供のように
貪欲に女を何度も何度も求めて…求めて…その結果女は気を失い、力を使い果たして俺の横で眠っている。
オモシロクネェー ダレナンダヨ!コイツノ ハジメテノオトコハ!!
イラつきながら、傍らでブランデーで乾いた喉を潤したいのだが飲んでも飲んでも乾いていくだけだ。
クソッツ!!!ナンナンダヨ!イラツク!イラツク!
ナゼダ?ナゼコンナニイラツク?コレジャ チュウボウ ノ トキミタイダゼ。
コノオンナノカコナンテ ドウデモイイハズナノニ キニナッテシカタナイ。
「ふん………でも―――――――――モウ、オレノモノダ
ゼッタイニ オレノナカカラ ニガサネェー カラナ……
オレサマノオクサン―――――――――。」
俺は不適に笑って、この女の情事の後でしめりの帯びた艶やかな髪に纏わりついている
薔薇の花びらを摘んで口に入れるとなぜか喉が潤いをおびてくる。
なぜか甘く感じた。
女の白い肌には俺が口にしているのと同色の所有の烙印が花びらのごとく散りばめられている。
久々かな…いやはじめてかもな。満たされた。
征服欲、独占欲。女を抱いてはじめて満足した。
政略結婚の相手でこんなになれるとは思わなかったぜ。
俺は女を腕に抱き眠った。
そういうことをしたのは初めてだった気がする。
少なくとも俺の記憶の中では
―――――― 初めてだ。
明朝
俺が起きても女は寝ている。
キツクシスギチマッタカ ダガ オレニハンコウスルノガワルイ
ジッーと見つめていると女が目を覚ました。
視線が少しだけ合うと直ぐにそらされた。
マダ シタガワナイノカ?
ナマイキダ
「樹さん。体大丈夫ですか?動けないでしょう?
思ったんですけど………あなた数えるほどしか抱かれたことないのでは?」
「――――――――――――だから?」
「いえ―――――――――――――
貴方のような体を数回抱いただけで、飽きるなんて
どのような男性だったのですか?ぜひ、知っておきたいものですね」
すると女は俺を鋭く睨み付けてくる。
何でそんな眼で見るんだ?
俺の事が嫌いでたまらない眼だな。
「そんなに知りたいのですか?」
「ええ…是非に」
「教えません。見つけたければ見つければ良い。貴方には無理でしょうけど」
そう言って向こうを向いてしまった。
ムリダト?!
オレニフカノウハナイ…。
「見つけて見せますよ。」
そう言って俺はベッドから抜け出し、身支度を整えて女にこういった。
「ゆっくりしてください。あ、動けないですよね。では」
そう言って俺は仕事に向かった。