ナンナンダ コノオンナ。

 

俺は目の前にいる女を睨みつけていた。

 

コノオンナ ガ  イッカゲツゴ オレノモノニナルショウヒン。

 

ババァが連れてきた俗に言う、政略結婚の相手。俺は女が嫌いだ。

金と権力に群がる蛆のような存在、性欲処理機でしかない。

この目の前にいる女は出された紅茶に口もつけないで、そっぽを向いている。

 

イラツク オンナ スマシタカオヲシテイルオンナ。

 

先ほど挨拶を交わしただけで一言も喋らない…この俺様が結婚してやるというのに馬鹿な女は何の感情も表さない。

紅茶がすっかり冷めた頃、この俺様から声を掛けてやった。

 



「樹(いつき)さん。僕を見てくれませんか?」



 

オンナ ハ  シタガッタ  チョロイ。

 

サテト コノオンナ ノ シナサダメヲシナイトナ。

 

俺はねっとりとした視線を女の体に這わしていく。

へぇー結構いい体してんじゃねーか…胸は大してねぇーが形はよさそうだ。

肌は白い。脚は結構長くていい感じ。

俺も伊達にオンナを喰ってきたわけじゃねぇーオンナをみただけで大体の想像はできる。

 



「何か話しませんか?今後の事など、どうせ結婚するのですから。

お互いの事を
よく知っておかないといけませんし」



 

『味見もしたいしな』と心の奥底で呟いた。

 

オンナはまっすぐな眼で俺を見据えてくる、いい眼だ…俺を嫌いでたまらないような眼だな……ゾクゾクしてきた。

舌なめずりしたい気分を隠し、俺はオンナを見つめる。

 

しばらくして

 



「私、用があるのでここで失礼いたします。夜のお相手はご自分でお呼び出しになられてはいかがですか?」



 

そう言って部屋を後にした。

 

 

 

クッツ

笑いがこみ上げてくる。気が強い女はきらいじゃねぇーむしろその逆だ。

調教のしがいがあって好都合。一ヵ月後にはイヤでも俺の所有物になるオンナ。

これからのことを考えただけで面白くてたまらない。

さてとどうやってあの生意気な女を喰ってやろうか……そればかりを考え、

その夜は
あいつと同じ東洋人のオンナを呼び出し貪り喰った。

 

 

 

性欲処理機が果てた後俺は気色悪い悪臭を洗い流しにバスルームへと向かい冷たいシャワーを浴びる。

 

 

 


だりぃー満たされねぇーな……こんなんじゃ自慰とかわらねぇー

前に脳天を突き破るほどの女を抱いた気がするが、その女の名前も顔もわかんねぇー

忘れちまっているぐらいだから、たいしたモンじゃねーとは思うが、胸がいたむのは何故であろうか。

わかんねぇー


 

 

 

俺はシャワーのコックを捻り勢いを強くした。

この嫌な気分を洗い流すかのように、冷たいシャワーを浴び続けた。

『この嫌な気分』の原因は俺のこの傷だ。

4年前暴漢に刺されて20年来の友人が言うには俺は何かを忘れちまったようだが、もうどうでも良かった。

 

 

 

ローブを羽織り、部屋に戻ると女が豊満な肉体で俺に擦り寄ってくる。

 

キショクノワリィーオンナ。

 



「司様。もう一度いかが?」



 

そう言って俺に触れてくる。

 

俺はオンナをドンとベッドに押し倒すとすぐさま脚を開いてくる。

 

バカナ オンナ。

 

俺はオンナの耳元で言ってやる。

 



「お前勘違いしてねぇー

お前みたいな低俗なオンナ一回吐き出せばそこでゲーム・オーバーなんだよ。

俺にとってお前は親が用意してれた玩具と同じ、飽きたら終わり。

まぁー一回で飽きたから消えろ…1分以内にな。

この俺様に殺されたくなかったら
出て行け!!!」



 

俺が怒鳴るとオンナは青ざめてほとんど裸同然で転がるように出て行った。

 

 

 

イツモノコトダ。イッカイヤッテ。アキテ。ステル。

 

 

 

その繰り返しだ…この4年間ずっと。

 

 



「アホっぽ」



 

 

そう呟き、口の中をブランデーを飲むことで消毒していくのもいつもと同じ行為。

ブランデーを何本か空けたとき、嫌な機械音が響いてくる。

 

 

コノオレサマ ノ ジカン ヲ ジャマ シヤガッタ ダレダ。

 

 

司はイラつきながらブランデーのグラスを片手に携帯を耳に当てるとババァ声がした。

 



「何の御用でしょうか?」

 

『今日、樹さんとは何かお話なさったの?

アレからお会いしたんだけど
あなたの事はなしても何も答えません。』



 

 

アノ オンナ ガラミカ。

 

ババァ ニ トッタラサイコウ ノ ドウミョウジ ニ ユウエキニ ナル

リヨウカチノアル ショウヒン。 

 

 



「――――――――ほとんど樹さんとはお話などしていませんよ。

どうせ
商品が一ヶ月後には道明寺の物になるのだからいいじゃないですか。

そうは思いませんか?楓社長。」

 

『―――――――貴方は本気で言っているのですか?』



 

 

 

何だ?ババァだって同じ考えだろう?

性欲処理だけしかできないオンナよりビジネスで
利用できる女のほうが【カチノアルショウヒン】となる。

本気も何も……ババァ言っとくがな。

 

 

 

オレハイチドタリトモ オンナ ニ カンジョウヲイダイタコトモネェー

アンナノタダノ セイヨクショリキ 。

 

 

 

あんたにだって何度も言っているはずだ…忘れちまったか?

今回の婚約でうちはさらにでかい怪物になる。

これ以上ないほどの業務提携がアノショウヒンと結婚するだけで手に入る。

しかもあの女は一人娘、女の実家に跡取りはいない

要するにだ…将来は全て道明寺の物、この俺様のモノだ。

 

 

 



「クッ――――本気などおかしなことを言わないでください。

あの女との婚約は貴方が決定になられたことでしょう?

僕に刃向かう権利などないのでは
道明寺財閥社長殿?」

 

『司 ―――― 変わっちゃったのね』



 

 

 

なにがだ?大体、俺が変わったかどうかなんてお前にわかるはずねぇーよ

ガキの俺を除け者にして世界中を飛び回っていた鉄の女にな。

 

 

 



「どうでしょうか。用件はそれだけですか?

心配しなくても
ビジネスでミスなんてしませんよ。

樹さんともちゃんと夫婦をやりますし
義務も果たしますので、

貴方にどうこう言われたくないですよ。楓さん」



 

 

 

俺が何故この『楓さん』と呼んだのには訳がある。

婚約を気に俺は道明寺財閥の総帥となる。これからはこの俺様が顎で使ってやる。

 

 

 

イママデ オマエガ コノオレサマニ  シテキタヨウニ 

コレハ アンタニタイスル
 フクシュウミタイナモンダ アンタニキョヒケン ハ ネェーヨ。

 

 



『―――――司さん。ひとつだけ言っておきます。樹さんを大事になさい』



 

 

 

そう言って切れた。

 

 

 

分かっているさ。いいかもを逃がしたくはねぇー。

 

 

―――――――――――――――――コレハ ビジネスダカラナ

 

 

グラスに残っていたブランデーを飲み干し乱暴に壁に叩きつけ、その部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

結婚披露宴を明日に控え、俺とババァと会長が女とその女の父親であるクロード財閥の総帥と最後の打ち合わせだ。

 

 

親達がにこやかに会話をしているが、この女は俺を見ようともしない。

 

 

 


まだ抵抗を続けているのか?浅はかで馬鹿な女だ。

この俺様と結婚できるのに何が不満なんだ?

好きな男でもいたのか?まぁー関係ねぇーが………。


 

 

 

――――キニイラナイ

 

 

 

オレサマヲムシスルナンテ ユルセナイ ユルサナイ。

 

 

 

ドロドロとしたカンジョウというものが湧き上がってきた。

 

 

 



「………ということで司君、娘をお願いしますよ。」



 

 

にこやかに俺に微笑みかけるクロード会長。

 

 

俺も微笑みながら

 

 



「お任せください。――――― 樹さん」



 

 

俺はにこやかに微笑んでショウヒンを見た。ショウヒンはチラッと俺を見据えて直ぐに横を向く。

 

腹立たしかったが、グッとこらえる。

我慢すれば我慢するほどコノオンナを支配したときの喜びが増すというものだ。

 

 



「明日とても楽しみですね。」

 

「――――そうですか。貴方は楽しみでしょうね。」



 

 

 

クッ 

相変わらず、俺に反抗するんだな。言っとくがこの俺にそんな口を利けるのは

今日までだからな。明日からは俺に絶対服従してもらうぞ。

 

 

 



「ええ………とても」



 

 

 

特に夜がな。俺はそのことを思いほくそ笑んで女を見ていた。

この俺に何の興味も無さそうな商品女をまるで蛇みたいにねっとりとした視線で嘗め回すかのように………。

 

 

 

その視線に気付いたのかそうでないのかわからねぇが、女は俺を見て下を向き、少しだけ震えていた。

 

 

ゾクッとなんともいえないものが溢れてくる。

いい感じだ。悪くはない。

 

 

 



「今日の貴方を見てますます楽しみになりました。」

 

「貴方はそうでしょうね」



 

お互い意味深げな笑顔でその日は別れた。

 
 
 
 
第一章