「それにしてもムカつく女共だぜ、お前に手ぇ出すなんてよ…」
邸へ戻る車の中、忌々しそうに司が呟いた。
「あいつ等の会社とは取引停止だな。いや、そんなんじゃ俺の気が修まらねぇし…」
「ちょ、ちょっと司。止めてよ、そう言う事言うの…。あたしはもう大丈夫だから、だからそんな事しないで!」
物騒な司の呟きをあたしは慌てて制止する。
「あ?んでだよ。今まで散々お前の事侮辱して来たんだぜ?それ位当然だろ。」
やっぱ潰すか…なんて、まだブツブツ言っている司を両手で挟み、自分に向ける。
「本当に何もしないで。あたしの事なら心配しないでよ。
さっき司が言ってくれたでしょ?俺が護ってやるって…。あたし、その言葉信じてるから。
これから先またこんな事があったら、その時は司にちゃんと言うから、だから見てて1人で戦うところ。
司はそんなあたしを支えてくれるんでしょ?」
あたしがそう言うと、司ははぁ〜…と諦めたように溜息を吐いて、
「ったく、本当お前はお人好しだよな…。俺には理解出来ねぇよ。
でもまぁ、お前が1人で戦うっつーなら俺は支えてやる事しか出来ねぇからな…。
でも、ぜってぇ次あんな目に合った時は俺に言えよ!次は許さねぇからな。」
最初の方は諦めた口調で呟いていたのに…。
最後に至っては、あたしに鋭い視線を向けてきつく言う。
やっぱり、内緒にしとくべきかも…
なんて事を内心考えているなんて、きっと司にバレたら怒られるんだろうな…
そう思って苦笑したあたし。
そんなあたしに司はニヤリと笑いかけ、
「じゃぁ、今まで甘えて貰えなかった分、今日からは思いっきりお前に甘えてもらうとするか。
邸に戻ったらまず、一緒に風呂入ろうぜ。」
なんて事を言ってくる。
「なっ!?あたしが甘えるって話をしてたのに、どうしてそうなるのよ!アンタが甘えるんじゃな〜い!」
2人で座るには広いリモの中、あたしの怒声が響く事も気にせずに司は、
「照れるな、照れるな。さぁ、そうと決まれば…。おい、運転手!10分以内に邸に着くようにしろよ。」
と運転席に繋がる受話器を取って、運転手さんに命令してしまった。
「あ、あたしは絶対嫌だからね!アンタとなんて入らないから!あたし1人で入るんだからね!」
邸へと急ぐリモの中、後部座席ではひたすらにあたしの怒声が響いていた。
ありがとう、司…
あたし勘違いしてたみたい。
庇われる事≠ニ護られる事≠ヘ違うんだね。
あたしね、強くなりたいと願う事に意地≠ノなっていたような気がするよ…
だけど、そうじゃないんだよね。
あたしにいつも大切な事を教えてくれるのは司だね…
もうすぐ、夫になる司へ…
これからも宜しくね。
Fin.